お客様の業界の情報収集を実施し、その情報を使って市場分析を実施し、優先的にアタックするべきお客さまを特定することができました。
また、競合とどのように差別化するべきかの情報も集まってきました。
イントロダクション
登場人物及び企業

スゴイロボット 株式会社
ロボットと制御ソフトウェアを開発するベンチャー企業。
飲食業界に配膳ロボットを販売する計画を立てている。

スゴイロボット(株)
営業部 営業一課 栄丸太郎
スゴイロボット社の営業担当。経験豊富な営業マン。

美食レストラン 株式会社
ファミリーレストラン業界のシェアNo1企業。全国にチェーン店舗を有する。スゴイロボット(株)が配膳ロボットの提案を試みようとしている。

ムジン技研 株式会社
ロボットと制御ソフトウェアを開発する企業。スゴイロボットの競合企業。警備ロボットを基にした配膳ロボットを新たに開発している。
「スゴイロボット株式会社」では、新製品の配膳ロボットの販売拡大を計画しています。
営業担当栄丸さんが情報収集と顧客分析を行い、美食レストラン(株)に向けた提案を進めることになりました。
競合は、警備ロボットの業界から参入してきたムジン技研(株)です。

ここでは、集まった情報を活用して、提案書を作る過程をご紹介します。
提案書の構成を練る
情報収集や分析を進めていくうちに、どのようなメッセージを入れれば良いか、見えてきました。

- ロボットに反対する人もいるだろうから丁寧な説明が必要だな。
- まずは、「背景」で政府や社会の動きからも導入がよさそうと伝えて…
- 「目的」でお客さまにとってどんなメリットがあるかをわかってもらい…
- 「内容」で実現方法と実現性を説明してはどうかな。
まずはストーリーを確立して、どのような内容を各ページに記載していくのか、を考える必要があります。
栄丸さんは、構成を何度も考え直し、最終的に下記のようなブロック図にしてみました。

技術部のメンバーとも相談したところ、特に大きな違和感はなさそうです。
まずはデザインを気にしすぎず、それぞれのページの骨格を作っていくことにしました。
提案書の骨格を作っていく
表紙
表紙には、決められた体裁があります。
ここであまり時間をかける必要がありませんが、サブタイトルはお客さまをひきつける一言を入れたいものです。

- まずは時間をかけずに必要な項目をささっと作ってしまおう。
- サブタイトルは作る過程でいいものが思い浮かぶかもしれないな。

目次
このページがあることで、お客さまも全体像を把握できるので、忘れないようにしましょう。
ここも、後回しにすることが多いです。

- 目次はパワーポイントのツールで作れるから最後に回してしまおう
提案の背景
提案書の導入部です。
いま、何が求められているのかを、広い視点でメッセージとして記載していきます。

- 情報収集で調べた、政治・経済・社会・技術に分ければ、世の中全体の動きを見せられそうだ。
- お客さまもまだ導入を迷っているだろうから、いまがいいチャンスである、という情報をお伝えしておこう。
栄丸さんが試しに作ったページはこうなりました。

栄丸さんは、特に次のポイントに留意しました。
- ページ単位で、最も重要なメッセージを一番大きく
- 記載内容は、このメッセージを補強する内容を記載する
- 仕上げの段階では、グラフなどを使って実際の数字を説明する
提案の目的(導入のお客さまメリット)
さて、背景を理解してもらった後、導入することでどんなメリットがあるかを理解してもらいたいところです。

- 情報によると、飲食店は利益を手元に残すのが難しいようだ。「収益の改善」とすれば関心を引きそうだ。
- 利益=売上-コスト だから売上とコストそれぞれに効果があることを見せると説得力がありそうだ。
- 本来はここで数字を載せたいところだけど、確かな情報による計算は難しいな…。
試しに作ったページはこうなりました。

本当はこのまま内容の詳細に入りたいところですが、
そもそも配膳ロボットが何かがわからないと、理解が深まりそうにありません。
いったん、提案の内容について説明するページを入れることにしました。
提案の内容
表面的な内容にしてしまうと、配膳ロボット全般に言えるメリットになってしまうため、
自社の製品だからこそできる内容だ!という点をわかって頂く必要があります。

- ここで、うちの商品がどうやって貢献するのかをイメージしてもらわなきゃ。
- 現状の課題がどう変わるのか、明確にしておこう。
- 競合と比べて、操作が容易であることを言っておこう。


- ロボット導入への否定的な意見もあるはずだ。想定されるQ&Aに合わせた内容も書いておこう。
- 競合に比べて、実績やサポートが充実しているはずだ。アピールとして記載しておこう。


- お客さま社内の技術部門が導入検討に関わりそうとの情報がある。ロボットのスペックを載せておこう。

提案の目的 詳細ページ
さて、商品の特徴もわかっていただいたところで、
目的ページに記載した内容を、どのようにして生み出すのか、説明していきます。

- 収益=売上ーコスト だから…
- 売上は、客単価×来店回数になるはずだから、後者を増やす方向にしよう。
- コストは、人件費と原料費の削減、ロボット運用費が増える分の一部は補助金でカバーできることを伝えてみよう。
- コストとは別に、収益を安定的に生み出すという観点で、店舗運営上のリスク軽減も説明してみよう。



スケジュール・参考価格
ここまでの内容でどれくらいの時間やコストで導入できるのか、気になり始めるはずです。

- 期間はお客さまがイメージしやすいように、正式注文になってから何か月で納入できるかを書いてみよう。
- 参考価格は書くべきか迷うけど、お客さま社内の審議を早く進めて頂くために今回は例として書いておこう。


提案時点での価格については、あえて書かずに口答でお伝えする、などの手もよく使います。
今後の進め方
このページが、ある意味では「まとめ」ページに相当します。
話を具体的に進めるための次のステップについて記述します。

- 本当に確かな製品なのか、お客さまはまだ不安なはずだ。実機を見ていただく機会を用意しよう
- 実機を見たうえでお客さまのご要望を最終確認して、確定版の御見積を出す流れにしてみよう

提案書を見やすくする
栄丸さんは、作成した骨格を、よりわかりやすいデザインに改善することにしました。
全体的に、文字で説明していたものを、より直感的に伝わるようにしていきます。


その他、下記の対応を実施して体裁を仕上げていきます。
- 表紙・目次・ページなど必須項目を追加
- 誤字脱字のチェックや、適切な表現への推敲
- わかりやすいデザインに変えていく
- 必要に応じて、補足資料を追加
解説及びアドバイス
提案書を作るうえで重要になるポイントを、「誰に」「何を」「どうやって」見せるか、という観点で確認しておきましょう。
誰に
提案書を見るのは、お客さまの担当者だけではありません。
お客さまが社内で検討を進めるときに関わるであろう、上司や技術関連の部門、社長などにもコピーが回るかもしれません。
直接説明はできないかもしれない、このような人たちにも内容がわかるようにしておくことが重要です。
何を
「何を」について最も重要なのは、ストーリーです。綺麗な見た目ではありません。
読み手にとっても、納得感のある話の流れにする必要があります。
ページの順番など、工夫できることがいろいろありそうですよね。
どうやって
「どうやって」で初めてデザインが出てきます。
読み手に納得感のある話を理解してもらう道具として、デザインがあります。
装飾にこだわるのは、最終段階であると覚えておきましょう。
次の記事では、お客さまとの初めてのアポイント取りの例をご紹介します。
せっかくつくった提案書を、きちんとお客さまにお届けできるようすすめていきましょう。
参考資料
提案書の作り方は良書がたくさんありますが、これだけは読んでおいた方が良い、という一冊だけ紹介しておきます。
提案書を見やすくするデザインの本も数多く出版されています。例としてわかりやすい本を挙げてみます。
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