競合分析でライバルを見抜け!勝てる提案書に向けた準備【法人営業のノウハウ(3)】

営業活動の進め方

競合分析は、顧客分析と並んで、提案書を作成する上で欠かせないステップです。
競合がどのような動きをしているのかを知ることで、自社の差別化ポイントや改善点を見つけることができます。

イントロダクション

この物語はフィクションです。実在の人物・商品・価格・団体などとは関係ありません。

登場人物及び企業

スゴイロボット 株式会社
ロボットと制御ソフトウェアを開発するベンチャー企業。
飲食業界に配膳ロボットを販売する計画を立てている。

スゴイロボット(株)
営業部 営業一課 栄丸太郎
ロボットのベンチャーであるスゴイロボット社の営業担当。経験豊富な営業マン。

美食レストラン 株式会社
ファミリーレストラン業界のシェアNo1企業。全国にチェーン店舗を有する。スゴイロボット(株)が配膳ロボットの提案を試みようとしている。

ムジン技研 株式会社
ロボットと制御ソフトウェアを開発する企業。スゴイロボットの競合企業。警備ロボットを基にした配膳ロボットを新たに開発している。

「スゴイロボット株式会社」では、新製品の配膳ロボットの販売拡大を計画しています。
営業担当栄丸さんが情報収集と顧客分析を行い、美食レストランに向けた提案を進めることになりました。

今回は、その得られた情報を使って、参入してくるであろう競合とどのように差別化するか、を分析します。

競合に関する情報を整理する

栄丸さんは、情報を集めて、さらに飲食業界における顧客分析をした結果、美食レストラン(株)への提案にまずは集中することにしました。

でも、情報収集の過程で、競合他社の存在にも気付きました。

お客さまは、我々の提案書と同時に、競合他社の提案書も手にするはずです。
見比べられたときに、スゴイロボットの方が魅力的であるように見せる必要があります。

栄丸さん
栄丸さん
  • 情報収集の結果、ムジン技研が最も強敵になることがわかっている。
  • これまで集めた情報を分析しやすいように整理しよう
  • 整理してから、差別化ポイントを見つけ出そう。

栄丸さんは、ムジン技研の情報を人・物・カネ・情報・時間にわけて考えてみることにしました。

競合が製品を開発して、継続的なサポートを実施するための体制は十分か、という観点です。

栄丸さん
栄丸さん
  • ムジン技研は、全国に配備されたロボットをサポートする体制がなさそうだ。協業先にもそのような会社があるように見えない。

モノ

競合が有するロボットやソフトウェアの機能でどのような特徴があるか、という観点です。

栄丸さん
栄丸さん
  • ムジン技研のロボットは、元々警備会社向けに作られていたものをカスタマイズしているようだ。
  • まだパッケージ化されていない。が、これをメリットに変えて、複雑な設定を個別に設定できる、とアピールしているようだ。
  • 衝突安全性能などは、わが社とほぼ同じくらいのようだ。

カネ

競合は、顧客の業界にどれくらいの売上シェアを持っているか、という観点です。
シェアが高いほど、発言力が強く、コストも安く抑えられる可能性があります。

栄丸さん
栄丸さん
  • ムジン技研の配膳ロボットのシェアはどれくらいだろうか。ムジン技研にとってはまだ新しい分野という情報があるから、ここは心配しなくてよさそうだ。

情報

競合が、データの高度活用にどれくらいの力を注げているか、などの観点です。

栄丸さん
栄丸さん
  • 配膳ロボットの機能の本質はソフトウェアだ。ムジン技研が実績のある警備業界ではどれくらいの知見を蓄積したのだろうか。
  • わが社は飲食業での試験稼働をやってデータを蓄積した。ここは勝てるかもしれない。

時間

競合が、納入やサポートなどで、どれくらい素早く対応できる力があるか、などの観点です。

栄丸さん
栄丸さん

  • ムジン技研は、個別に複雑な設定をやっていく仕様のようだから、納期の観点ではわが社の方が有利かもしれないな。

自社と競合の、それぞれの強み・弱みを分析する

競合の分析

栄丸さんは、これまで集めていた情報を整理し、ムジン技研の営業になったつもりで、強み・弱み・市場における機会・市場における脅威の4つを図にしてみました。

強み・お客さま企業や店舗ごとの独自設定を設計できる
警備機能などのオプションをつけられる
・警備業界での導入技術をアピールできる
弱み・配膳ロボットとしてパッケージ化が十分でない
・要望仕様により価格も納期も上がってしまう
・飲食店での導入実績がない
全国でのサポートサービスが難しい
機会・店舗によっては夜間営業していない(警備ニーズ脅威・ロボットの導入にそもそも否定的(雇用の確保など)
栄丸さん
栄丸さん
  • ムジン技研は、警備機能も含めて、独自機能の設定ができることをアピールしてきそうだな
  • 飲食店向けパッケージ化によって価格・納期が有利になる点をアピールすると、ムジン技研は嫌がりそうだな
  • 飲食店における実績がない点はあまり突かれたくないはずだ

競合に勝つための自社の強み・弱み

栄丸さんは、情報収集で得られたお客さま業界が持つ課題と、ムジン技研への対抗を念頭に置いて、強み・弱みを下記の通りまとめてみました。

強み・配膳ロボットとしてパッケージ化されており、操作が簡単
・パッケージ版であれば価格も納期も比較的抑えられる
・飲食店での導入実績がある
・全国でサポートできるサービスがある
弱み・お客さまごとの細かな設定をすると価格も納期も増えてしまう
・配膳以外の機能は一から開発しなければならない。
機会・アルバイトが主に使うため、簡単な仕様が好まれる
・全国に店舗がある
脅威・ロボットの導入にそもそも否定的(雇用の確保など)
栄丸さん
栄丸さん
  • 情報収集では、労働力確保が課題になっていたから、新人アルバイトでも操作しやすい、簡単な仕様が好まれるはずだ。
  • 美食レストランは全国チェーンだから、ムジン技研ではまだできていないサポート体制でも有利にできそうだ
  • 飲食店における実績はアピールしておこう

まとめ

競合の情報を整理して、分析に活用することで、自社がどのような位置づけを狙えば勝てるか、がわかるようになります。

人・物・カネ・情報については、主に企業の経営資源を分析するときによく使われるツールですが、顧客分析や競合分析など、様々な局面で使用できる便利なフレームワークです。

また、強み・弱み・市場における機会・市場における脅威、の4つに分けた分析は、マーケティングではSWOT分析と呼ばれるものです。

SWOT分析は様々な使い方がありますが、現実の営業活動では、上記のように競合だったとしたらどういう表になるだろう、と考えるやり方がわかりやすい使い方のひとつだと思います。

顧客分析と、競合分析によって、自社の立ち位置が決まったところで、
次の記事では、これを提案書に活かす過程をご説明します。

参考文献

SWOT分析もまた、マーケティングの分野の知識が活用できます。
良書がたくさん出版されていますが、読みやすい書籍をご紹介します。

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